情報システムの導入は、大きなプロセスの変更を伴うものです。また、組織の見直し、仕事の仕方の変革、さらに人員の配置換えや削減なども多くのケースで必要となります。逆に、このような変革が伴わないシステムの導入は、効果があるのか?疑問に思います。

システム化により、中抜きになり、不要となる業務、コストの低いアウトソース、海外も含めての業務移管など、システムとともに大幅な業務プロセスの再編成、これに伴う雇用の問題が発生、当然、大きな抵抗が生まれます。しかし、既存の組織、プロセスを超えて自由に検討していかなければ、会社の成長に役立つマスタープランの策定は難しい。現行のプロセス、システムを踏襲するものしか策定されません。

ネット証券の時代の訪れととともに、松井証券は、営業部員を全廃する方向で、コールセンター化、さらにコールセンターからインターネットに全面的に切り替えるなど、大規模な人員削減、職種転換を断行していますが、当然雇用に関わること、大きな抵抗が生まれ、これに対処しています。

組織、集団は、安定を好み、いままでの仕組みを変更することを嫌うものです。大きな変更が起きるときは、必然的に抵抗が起きます。この変革に向けて起こる抵抗について、ハーバード大学で行動科学を研究するマイケル・ビアーは、(Resistance<Motivation×Model×Method)というモデルで分析しています。

抵抗の大きさは、モチベーション、モデル、方法の3つの要素により決定されるというものです。

・Motivation:変革をおこないたいという意欲がおおきければ抵抗は、少なくなる。

・Model:変革後のモデルが明確であれば抵抗は少なくなる。

・Method:変革に導くための方法として抵抗が一番小さいの、変革の当事者となってもらうこと、大きな抵抗を生むのは、上からの押し付け、強制、実施しなければ解雇だなどの脅しを伴う場合、短時間で変革を遂行できるが、裏で大きな抵抗が生まれる。この中間にあるのが、コミュニケーションと教育を重ねていくこと。抵抗は小さいが、実施までに時間がかかる。

変革により企業、組織にどのようなメリットが生まれるのか、それにより大きな変革を伴うシステムを計画するときには、システム導入後にどのような処理プロセスになるのか、具体的に示すことで変革に巻き込まれる人々は安心し、抵抗が小さくなる。逆に、システム導入後にどのような処理プロセスになるのかはっきり示されなければ、人々は不安を募らせ、変更に大きく抵抗する。

変革の方法も、コミュニケーション、教育に十分な時間とリソースを割き、人々に納得を得るとともに、必要をみて、トップに明確なメッセージを発信、変革をリードする方法を十分考慮、抵抗を和らげていく。

一番難しいのが、モチベーションの問題でしょう。それが企業、組織にとって必要不可欠であり、競争に勝ち抜くために避けられない変革であると繰り返し説明しても、巻き込まれる各人にとってメリットが見いだせない場合など、現行プロセスの担当者として新システムへの意見を求めるなどの機械を作り当事者意識を高めていくなど方策を練る必要があります。

このように、変革をリードし、成功させるには起こりうる抵抗を視野に入れてマネジメントするチェンジマネジメントが欠かせないタスクなのです。