武田薬品は、日本を代表する製薬企業また、2003年に長谷川社長となるまで、武田國男社長がリードする、いわゆるファミリービジネスであった。

かつて勤務した外資系製薬企業で同じIT部門に勤務していたイギリス人がIT企業に転職、日本に海外で使われているソリューションの紹介に出張、武田薬品を訪問したときに、「英語を話すな!」といわれて困ったとこぼしていたことがあった。英語圏の人は、日本に来ても、英語で日本人に話しかけるのにそれほど躊躇しないように感じていたが、彼は武田薬品に行って英語で製品説明をしようとしたのだろう。武田薬品の出席者は、通訳を介し、日本語での説明を期待していたのだろう、10年くらい前だと思う。

その武田薬品であるが、今は、東京にグローバル本社があり、組織体制という役員構成をみると、ほとんどが横文字の役員である。2014年にGSKでワクチンビジネスをリードしていたクリストフ・ウェバー氏がCOOに就任、2011年に武田にヘッドハントされたタチ山田が同じGSK勤務したクリストフ氏を招いたということであるから、マネジメント体制のグローバル化は、徐々に進められていたのだろうが。

ソニー、日本板硝子、オリンパスなど外国人がヘッドになったことはあるが、武田薬品のグローバル本社組織体制は、欧米のメガファーマといわれる多国籍製薬企業の役員構成と遜色ない、まさしくグローバル企業といえる。ユニクロや楽天が社内の公用語を英語にすると報道されたことがあったが、武田薬品の場合そもそも日本語を話させない役員がほとんどであろうから、レベルが違う。

クリストフ氏の社長就任には、株主である創業家の一部などが反対、またアイルランドのシャイアー社買収でも創業家が強く反対したことなど報道された。伝統的な日本企業から一気にグローバル企業に転換するというのは、これまでに例がない、ある意味大きな実験といえるのではないか。