大企業では、過去に開発されてきたITシステムの維持管理が膨大になり、システム化予算の70-80%を占めるといわれます。一方、ITはかつてのように、単純作業をコンピュータに代替する、給与計算を人がソロバンや電卓でしていたものをマシンに置き換えるという目的から、企業内の部門、企業の枠組みを超えて情報連携させることで、ビジネスモデルを大きく変革させる道具として進化しています。ユニクロの製造販売モデルは、ITを活用、プロセスを密接に連携することができてはじめて成り立つもので、大きなリスクを伴うものですが、同時にこれまでの業界では実現できなかったような価格で高い品質の製品を提供可能としています。

松井証券が始めたネット専業証券というモデルは、証券売買の手数料を大幅に引き下げる、ネット証券の需要を喚起する口火をきりました。

ITを活用することで、同じ業界の競合企業が新たなビジネスの仕組みを生み出していくなか、これに対抗するような方策を打ち出していかなければ、業界内でのシェア低下は避けられない状況となります。文具業界では、アスクルが打ち出したモデル、既存の文具店を巻き込み、ITを活用して中小企業の注文を獲得していったなか、これに対抗できない既存企業は、売上を奪われていきました。

このように考えると、単なる予算策定としてのIT計画しか策定していない企業と、常にプロセスの見直しとともに、ITマスタープランを見直し、よりよりプロセスをIT活用で実現しようと努めている企業では大きな差が生じます。戦略的なITマスタープランを策定できない企業は、業界の競争に大きく取り残されるリスクを負っているともいえます。業界構造、プロセスを見直し、ITマスタープランを策定していない企業は、プラン策定の重要性から考え直す必要があるのです。