コスト削減、生産性向上のためのIT導入は、プロセスを分析して、不要なプロセスを洗い出し、あるいは共通のプロセスを統合、さらにIT導入で自動化できるプロセスを人手からITへ代替していくというのが手順になります。一方、戦略的なIT導入では、顧客の視点で自社のサービス、製品を見直していくことが必要になります。顧客へのサービス、製品の提供に関わるプロセスですから、当然企業戦略の中核、勝ち負けに関わる、大きなリスクを伴うものとなります。証券業界で考えると、松井証券がネット証券に全面的にシフトしていくというのは、今後、顧客にとってネットでの売買が中心になり、手数料でもメリットが大きいという大きな流れを読んでのことです。しかし、ネット証券へのIT投資は、当時の松井証券の規模から考えると、非常に大きなものであり、リスクを伴うものでありました。また、証券マンと会話して、さまざまな情報を得てから取引をしたいという顧客は、当然他の証券会社に流れてしまいます。これは、企業の競争戦略そのものといえます。