コロナの影響で、情報サービス産業では、人手不足を感じる企業が大きく減ってきているという。2017年ころから、マイナンバー対応、メガバンクの統合プロジェクトなど、大規模プロジェクトにより技術者の人材不足が問題とされてきた。活況を呈していたようにみえる情報サービス産業ではあるが、1990年代には不況を経験、多重下請け、労働集約的な業務形態など、建設業に似た業態は、構造不況業種といわれた。その後、インターネットのめざましい進展のなか、活況を呈してきた情報サービス産業であるが、構造的な問題は変わっていないとも考えられる。産業界のDXといわれるデジタルトランスフォーメーションを牽引するであろう情報サービス産業ではあるが、反面、不況期には構造不況業種の側面がのぞかれる。

以下では、情報サービス産業が形成される過程において、ハードウェアを中心としてベンダー系、親会社の情報システム部門から生成されたユーザー系、さらに独立した資本により創立された独立系の企業群が技術的な変化、景気変動などのなかでどのような動きをみせたのか、その成長を分けたものは何かの分析を試みる。

情報サービス産業とは

情報サービス産業は、総務省・経済産業省「平成24年経済センサス」の分類表によれば、顧客の委託を受けて、プログラム開発を行う「受託ソフトウェア開発事業」、会計処理パッケージのように、不特定多数のユーザー向けにレディメードのソフトウェアを制作、販売する「ソフトウェアプロダクツ開発事業」、委託を受けて計算処理やデータ入力などを行う「情報処理サービス事業」、インターネット経由でのデータベース提供事業などの「情報提供サービス事業」、市場調査などの「各種調査事業」、ネットワーク提供などの「その他情報処理・情報提供事業」から構成される。

また、平成24年3月27日、「情報サービス産業の現状」経済産業省商務情報政策局情報処理振興課によれば、2010年で売上高20兆円、従業員数100万人、企業数は、23,000社とのことである。

さらに、同報告書では、受託ソフトウェア開発が売上高の50%、従業員数規模が小さい事業者では、受託開発、人材派遣が70%の売上比率とのことである。

分類表からもわかるように、自動車産業、鉄鋼業などと比較して、情報サービス産業は多くの多様なサービスから構成され、一概にはとらえにくい。

新しい産業として情報サービス産業は1960年代から全体としては高い成長率を維持してきたが、みずほ産業調査報告‘53 2015 No.5 平成27年12月25日発行 みずほ銀行産業調査部発行によれば、2008年のリーマンショックで0.1%、2009年では、-5.5%のマイナス成長、2011年の-0.6%までマイナス成長、2012年に0.8%の成長となっているが、2013年からは2%台の低い成長率となっている。インターネットの進展により、Webでの取引が増加する一方、システム構築の需要は社会全体としては急伸していると思われ、意外な感じがする。企業のホームページ、電子商取引関連のシステム構築は、情報サービス産業には分類されない新たな企業、また各企業の情報システム部門で制作されているのではないかと思われる。経済産業省の特定サービス産業動態調査統計でも、2009年から情報サービス業とは別に、インターネット付随サービスという業態の統計調査が実施されている。