現在のように激しく経営環境が変わる中、3年程度の先まで見据えてITマスタープランを策定しても、計画を策定してもそのように実現される可能性は低いでしょう。どうせ実現されないのであれば、計画など策定するのはリソースの無駄ではないか?そのような無駄なことはやらないで、実際のビジネスに時間を注いだほうがよいではないかという考えも生まれるでしょう。
しかし、ITシステムの構築には、多くの期間を要すものです。競合他社がITを活用したプロセスを構築しているときに、自社は旧態依然としてシステムで対抗するのでは、大きな差がついてしまうリスクが生まれます。
かりに、計画どおりにIT化が実現されないとしても、プロセスとITを見直すなかで、現状のプロセスが明らかになります。マスタープラン作成のなかで、実施されるコミュニケーションは、経営戦略を実際にオペレーションに落とし込んで、具体的にどう実現していくのかの大きな下地を作ることになります。
ITマスタープランについて、ビジネスとITの積極的な参画があり、建設的な議論が進められるのであれば、経営戦略を実現するための有効なコミュニケーションとなります。
また、経営者にとっても、現場を担うスタッフが現状のプロセスをIT活用でどのように高めていけばよいのかについてのフィードバックがあれば、難しい経営判断を下すための大きな力となるでしょう。
このように、ITマスタープランは、経営戦略を実現するための企業としての能力を高め、ITとビジネスのコミュニケーション、さらに現場スタッフと経営者とのコミュニケーションを高める有効な手法となるのです。