IT導入が生産性を下げる
今日、「ITを導入すると生産性が下がる」と話せば、笑われてしまう、まともに受け止められることはないでしょう。ところが、1993年、MITの教授、ITについて研究しているエリック・ブリニョルフソンは、「ProductivITy Paradox of information technology(生産性向上とIT化の逆説)」という論文を発表、これについて論じています。1970年代前半から1990年代前半にかけ、アメリカの生産性は著しく停滞、一方この期間、コンピュータの技術革新は目覚ましく、かつて大型コンピュータでしかできなかった処理が、個人のデスクにあるPCで実現できるようになった。同じようなことが自動車産業でおきれば、1千万の高級車が千円で購入できるようになったようなものである。安価になったコンピュータがオフィスや工場に次々投入され、効率化に寄与しているのに、アメリカ全体の生産性は、停滞しているというのは奇妙ではないか。本当にITは役に立っているのだろうか、という疑問です。
これについて、経済学者も交え、さまざまな解釈がなされました。「IT投資は、その効果が出るのに時間がかかる」、「IT投資の多くは失敗しているのだから、生産性向上には貢献していない」、「IT投資は、耐久財投資のなかで10%程度しか占めていない、他の投資を含めて考えるべきである」などの議論が戦わされました。やがて、1990年代後半、インターネット革命が起き、アメリカの生産性は再び上昇、この議論は下火になっていきました。
ITについては、いろいろな迷言が飛び交っています。技術革新が激しいなか、自社に最適なITを考えるのはさらに難しくなってきているのではないでしょうか?