バブル崩壊、1991年以降の長期にわたる経済停滞、「失われた20年」は、実はインターネットが勃興、ITを戦略的に活用する企業とそうでない企業の格差が急速に拡がった時代でもあります。多くの企業が景気の停滞を嘆き、旧態依然のビジネスモデルにしがみついているなか、ITがもたらしたチャンスを利用、これまで考えられなかったようなビジネスモデルで成長を遂げた企業が生まれてきた時代でもあったのです。これは、ITベンチャーなど、ITに特化した企業に限ったことではなく、衣料品、銀行、証券など各種業界に共通していることです。ITにより、業界構造が大きく変化するなか、これを積極的にチャンスと考え、アクションを取った企業が成長する時代であったのです。

ユニクロは、自ら製品を企画、生産し、自社の店舗で販売する製造小売りというシステムに特化しています。流行に左右され、販売予測が難しい衣料品業界で、自ら生産、販売するというのは、売残など大きなリスクを伴うものです。製造小売りという仕組みは、店舗での販売情報を分析、生産計画に直結することで可能となる、ITを駆使することではじめて可能となる仕組みといえます。ITを利用することで、これまで不可能であったシステムを可能にする、これによって競争優位を得ることができる、逆にITを活用した新たなシステムにチャレンジしない企業は、競争に負けるというリスクにさらされる時代になっていたのです。今でも、多くの企業でみられる、現行システム、プロセスを維持するためだけにほとんどのIT予算が投入されているというのは、企業の競争力向上に直結したIT投資の機会が見過ごされている可能性が大といえましょう。