情報サービス産業をソフトウェアを制作するという観点で考えると、以下の3つに大きく分類できる。

任天堂を中心に国際競争力の高い日本のゲーム産業と対照的に情報サービス産業の輸出競争力は、ほとんどないという。実際、日ごろ利用するソフトウェアでは、マイクロソフト、グーグル、オラクル、SAPなど、欧米のソフトウェアが多く、こうした企業と肩をならべるような日本企業というのはない。

顧客の要望に応じて個別ソフトウェアを開発していくカスタムメードソフト、経済センサスでは、受注ソフトウェア開発事業として分類され、情報サービス産業の半数を占める。カスタムメードソフトウェアは、顧客企業の要望に応じて個別のソフトウェアを制作していくビジネスであり、建設業のように国内に立地、顧客先で打ち合わせやプログラム開発を実施することが一般的、さらに顧客が属する業界慣行への理解、日本語でのコミュニケーションなど、外資系企業が参入するには難しい側面を持つ。逆に、国内のカスタムメードソフトウェア開発企業が、海外市場でビジネスを展開するのも容易ではない。そのため、内需中心のビジネス、ゲームソフト、ゲーム以外のパッケージソフトとは国際競争という観点で大きな相違がある。

カスタムメードのソフトウェア開発を担う企業にとって、日本語、日本の商習慣、規制要件を外資の参入を阻む大きな壁であり、逆に海外の市場に参入する壁でもあったのだろうが、業務アプリケーションでもインターネット経由でサービスとして利用するSAASが普及するなか、この壁が低くなってくることも考えなくてはいけない。

製薬会社の重要な業務の一つに、副作用の収集、分析、また規制当局への報告がある。この副作用管理のためのデータベースシステムとして、長らく日本語だけに対応した和製のソフトウェアパッケージが利用されてきたが、多言語対応のソフトウェアへの切り替えが進んでいる。ネットワーク、ハードウェアの進展により、一局に置かれたサーバーに世界の各局からアクセスすることが可能となり、また新薬開発では、世界同時開発、日本、ヨーロッパ、アメリカといった各地から患者を集め同時に治験を実施することが主流となりつつあることが背景にある。残念ながら、日本語、日本の規制要件に特化したきた和製パッケージは、欧米のソフトウェア製品に市場を奪われつつある。