「生き残るアパレル死ぬアパレル」(河合 拓著)によると、アパレル業界の構造は、市場シェアでみると20%がユニクロ、20%が上位10社、残り60%が2万弱の中小・零細企業であるという。市場に流通される60%を中小・零細企業が競って企画・生産・販売、農産物の生産調整にようにある程度の幅で価格コントロールするメカニズムがないなか、全体としては大きな供給過剰、そのため定価で販売される品物は少なく、多くの値引きを重ね、廃棄される商品も生まれるという。

衣食住のなかで、住居費用は簡単には削れない、引っ越し、持ち家であれば転売など大きく環境を変えることになる。食費については、毎日のなかで節約を重ねることになるのだろうが、2000年から消費支出に占める食料品の割合、エンゲル係数は上昇している。生きていくために食べるというより、嗜好品の意味合いが強くなったこともあるのか。

一番削減されやすいのが衣料品、メルカリなど中古品の流通が個人間でも進められるようになった今、定価で売るというのが非常に難しくなるのだろう。バブル崩壊、1998年から日本人の平均所得が低落傾向にあるなか、衣料品の販売が増えるというのは期待できないだろう。

それでも、市場の60%を占めるという中小・零細企業は、ギリギリのところで経営を続けているのだろう。過去の設備投資など借入金もあり、ギリギリでも経営を続けなければならない、供給過剰だといっても個々の企業は生産を継続、借入金返済を減額、低金利の恩恵もありなんとか経営を維持、金融機関も中小・零細企業の破綻、不良債権を抱えることは回避しようと、追加融資など対応することになる。トランスフォーメーションだ、DXだといっても響かない、こうした業界では、徐々に破綻、見切りをつけた企業が撤退、ゆるやかに構造転換が進行していくのだろう。